アスペルガーのメソッド

Methods of Asperger

アスペルガー/ASD(自閉症スペクトラム障害)児を機械で診断できるようになったらしい

はじめに

ASD(自閉症スペクトラム障害児)を機械で判別できるようになったらしい。

自閉症スペクトラム障害児における脳活動の特徴を捉えることに成功 | 金沢大学

金沢大学は、この分野で最近ニュースリリースを見かけることが増えました。発達障害の診断が機械でできるようになると、医師や臨床心理士の経験頼みだった診断から一歩前に進むことができます。

幼児用脳磁計 MEG を日本幼児のアタマの大きさにカスタマイズ

子どものこころの発達研究センターの髙橋哲也特任准教授,三邉義雄教授らの研究グループは,産学連携のプロジェクトで開発した幼児用脳磁計(MEG:Magnetoencephalograghy)を活用し,幼児期の自閉症スペクトラム障害児における脳活動の特徴を,新しい解析法を用いて捉えることに成功しました。引用:自閉症スペクトラム障害児における脳活動の特徴を捉えることに成功 | 金沢大学

この研究が随分と進んでいるようで、

現在、ASDの診断は、専門の医師が子どもの行動を観察したり、親に日頃の様子を質問したりして判断します。
ただ、問診だけでは完全に見極めることが難しいケースもあるといいます。

そこで、ASDを科学的に診断していこうという研究が進んでいます。




 

金沢大学 子どものこころの発達研究センター 菊知充教授
「こちらは『小児用MEG』という機械。」



 

金沢大学が企業と共同で開発したこの機械。

151個の高感度センサーが、脳から発生するわずかな磁場の変化を捉え、脳の動きを細かく分析することができます。
金沢大学の研究チームは、ASDの子どもとそうでない子ども、合わせて100人に幼児番組の映像を見せて、脳の働きを調べました。


ASDではない子どもの場合、「左脳の前側」と「右脳の後ろ側」が活発に信号を送り合います。
これが、コミュニケーションにおいて、重要な役割を果たしているとみられています。

 

一方、ASDの子どもの場合は、送り合う信号の量が少ないことが分かりました。
この装置は、まだ実用化に向けた研究段階ですが、こうした脳の特徴を捉えることが、より早期の診断につながるのではないかと期待されています。
 

金沢大学 子どものこころの発達研究センター 菊知充教授
「問診がとても難しい場合に、客観的な指標で、より正確に早期診断の補助となることが期待されている。
より効果的な早期介入(支援)が可能になってくると考えられる。」

引用:自閉スペクトラム症 早期発見で支援を|特集ダイジェスト|NHKニュース おはよう日本

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)か、そうでないかのスクリーニングも容易になりそうです。

こうした研究が進めば、自閉症スペクトラム障害(ASD)か、そうでないかのスクリーニングも容易になりそうです。ぜひとも大人の自閉症スペクトラム障害(ASD)にもこうした科学的な検査が導入されるといいですね。

わたしなんか、検査したら自閉症スペクトラム障害(ASD)じゃないって言われたりして。そうしたら、途方に暮れるのか、よしまる病とか新たな名前を付けてしまうしか道はないのでしょうか。と暗いことを考えてみたりしております。

発達障害(アスペルガー・ADHD)の「聞き間違え」。コミュニケーション問題の原因は「耳」?

はじめに

「発達障害」にみられる「コミュニケーション障害」は、脳の働きが主に関係していると考えられています。それで、現在は、IQテストが「コミュニケーション能力」の判断材料の一つになっています*1

それがもし、「耳の問題」も関係しているとしたら、ちょっと驚きではないでしょうか。

今日は、発達障害の中でも「自閉スペクトラム症」における「コミュニケーション障害」が「内耳」のトラブルとも関係があるかもしれないという研究に関する記事です。

1kHz(1,000ヘルツ)をキャッチする内耳に問題あり?

2013年 ウッチ医科大学の研究

まず、2013年のポーランド・ウッチ医科大学の研究では、3歳~18歳の自閉症の子どもに「耳音響放射測定」をしたところ、定型発達児に比べて1kHz(1,000ヘルツ)と2kHz(2,000ヘルツ)の帯域で耳音響放射が弱いという結果が出ました。

「耳音響放射測定」では、音の振動をキャッチする最終的なセンサーである「内耳(蝸牛の有毛細胞)の働き」を周波数別に測定することができます*2。耳音響放射が弱いというのは、多くの場合「内耳(蝸牛内の有毛細胞)」の機能不全を意味してます。

また、鼓膜聴力検査(ティンパノメトリー)では、タイプBとC2の曲線を示した(鼓膜や外耳の方にも問題があると思われる)自閉症児が多くみられたという調査結果も提示されました。

2016年 ロチェスター大学の研究

最近になって「自閉症」と「内耳」に関する研究を裏付ける新たな研究結果が発表されました。

米国国立衛生研究所(NIH)の資金提供によるロチェスター大学の研究によると、一般的な聴力検査で正常値だった6~17歳の自閉症児35人と、定型発達児42人に「耳音響放射測定」をしたところ自閉症児のグループの内耳で「耳音響放射の低下」が明らかに多く見られたことを報告しました。つまり、普通の聴力検査で異常がなくても、音響放射測定では異常があったということです。

特に「歪成分耳音響放射(DPOAE)測定」では、1kHz(1,000ヘルツ)帯での音響放射が自閉症児の方が25%低かったこともわかりました。さらに興味深い点として、耳音響放射の低下が「受容-表出混合性言語障害(コミュニケーション障害)」と関係している可能性があると指摘しています。

この点について、英国の国民保健サービスは研究者の言葉として「言語内の似たような母音を識別するのが困難になる」可能性があると解説しました。*3

しかし、自閉スペクトラム症の人の「耳音響放射の低下」が定型発達児よりも優位であると言い切るには、もっと大規模な調査が求められるでしょう。

日本でも、自閉症に対する耳音響放射の研究が進むことを期待しています。

1,000ヘルツ帯とコミュニケーション障害の関係性

1,000ヘルツ帯の障害で、まず思い浮かんだのが、英会話教材の宣伝などでよく見かける「トマティス博士の言語別周波数表」です。

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出典: http://beepopenglish.com

各言語には独自の周波数帯があり、日本語と英語は周波数帯がほとんどかぶらないため、「日本人はネイティブの英語を聞き取りづらい」という解説で使われています(イギリス英語やスペイン語でも1,000ヘルツ帯を使用しているという指摘もある)。

この表を見ると、1,000ヘルツ帯というのは、主要言語の多くで使用されている周波数帯であることが分かります。特に日本語では主要な周波数帯と言えるでしょう。

先程、1,000ヘルツ帯の有毛細胞が不全だと「言語内の似たような母音を識別するのが困難になる」可能性が指摘されていました。たとえば、「ある瞬間だけ単語を聴き逃してしまう」とか「母音が近い単語を聞き間違えてしまう(わさび、はさみ、ささみを間違えるなど)」などは内耳の問題と関係があるかもしれません(毎日が空耳アワーならいいのですが)。

たとえば、アスペルガー症候群の人の場合、言葉の発達の遅れが無いにも関わらず「人の話を理解するのが苦手、話を聞こうとしない、話をするのが苦手」などの問題を抱える「受容-表出混合性言語障害」が多く見られます。しかし、研究結果からすると、実は「ある部分がよく聞こえていない」ために「会話理解や表現が苦手」だという可能性も出てきたというわけです。

おわりに

発達障害にみられる「コミュニケーション障害」は「心」か「脳」か、それとも「内耳」の問題か。はたまた、そのすべてなのか。ケースバイケースなのか。

今回の研究で判明した「自閉症児における1,000ヘルツ帯に対応する内耳の反応が悪い」ことと「受容-表出混合性言語障害(コミュニケーション障害)」の関係について、さらなる研究がなされることを期待したいと思います。

内耳や音響放射について知りたい方は、過去の記事が参考になります。

[過去に人気があった記事]

*1:現在の日本の医療では、自閉症とADHDを併発しているケースが多いにも関わらず、どちらか片方の診断がなされていることが多いため、タイトルでは総括して「発達障害」という呼称を使用しました

*2:この検査法については「耳の仕組み 鼓膜はテコの原理で振動を3倍に増幅。最後は水振動で毛を揺らす - アスペルガーのメソッド」で説明しています

*3:Could a hearing test help diagnose autism in babies? - Health News - NHS Choices

耳の仕組み 鼓膜はテコの原理で振動を3倍に増幅。最後は水振動で毛を揺らす

はじめに

聴力と自閉症の関係について調べていたら、耳の仕組みがかなりメカニカルでびっくりしたので、まとめてみようと思いました。

ざっくり語っても、繊細な耳の仕組み

wikiを元に図を作ったのですが、我ながら非常にわかりにくい! Youtubeを調べると素晴らしい映像があったので、忙しい方のためにGIFアニメでまとめてみました*1

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耳 - Wikipediaより出典後、一部改変。

ステップ1 空気を媒介して音は鼓膜に届く

音は、まず「耳(耳介)」で集音し、「外耳道」を通って、「鼓膜」を振動させます。ペコペコ、ブルブル。↓これ鼓膜のイラスト

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GifアニメはすべてAuditory Transduction (2002) - YouTubeからです。素晴らしいので、是非ご覧ください。

ステップ2 鼓膜から先は、テコの原理で振動を3倍に増幅

なんと鼓膜の裏には、骨がつながってたんですね。鼓膜を横から見た図。

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この3つの小骨が、テコの原理で振動を3倍に増幅することができます。

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3つ目の小骨が、ビートを刻み、いえ、振動を増幅させ、「蝸牛(かぎゅう)」という器官に伝えます。かなり機械仕掛け感あります。

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ステップ3 音の振動は「空気」から「液体(リンパ)」に移動

内耳の「蝸牛(かぎゅう)」の断面図。蝸牛の中には3本のパイプが通っていて、リンパ(液体)で満たされています。つまり、音の振動は空気から、リンパ液に変換されて振動するのです。

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ステップ4 蝸牛(かぎゅう)内では、周波数ごとに音をキャッチする

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ちなみに、10番の「蝸牛(かぎゅう)」は、ホルン状になっていて、蝸牛の入口付近では高音をキャッチ、奥に行くに従って低音をキャッチします。

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出典:hearing | sense | Britannica.com

ステップ5 水の揺れを、「毛」、つまり「有毛細胞」が捉え、神経信号に変換。信号が脳に到達し、「音」と認識される。

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蝸牛(かぎゅう)の中はさらにメカっています。「有毛細胞」は、音の振動を最後にキャッチする器官です。「有毛細胞」は約1万5000個あると言われ、蝸牛のパイプの中で綺麗に並んでいるのですが、周波数エリアごとにある有毛細胞の「毛」の部分が変形すると、土台が興奮し、神経伝達物質を放出します。それが、脳内(聴覚中枢)に送られて、音と認識するわけです。ジャジーでグルービーですね。

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これらすべてのステップを、一瞬で処理し、24時間使っていることを考えると、耳を酷使したらかわいそうな気がしてきました。

また、難聴や耳が遠くなる現象の多くは有毛細胞の損傷や老化にも原因があるようです。iPS細胞で再生できないものかしら。

耳が音を拾うと、耳は別の音で返している

もっと興味深い話。

音を有毛細胞が拾った時、実は有毛細胞自体からも音が出ているということ。つまり、耳が音を拾うとき、耳は同時に音を返しているというのです。なんで耳から音を出す必要があるのか。その理由は、まだ分かっていません。不思議です。

1,000ヘルツの音を耳に送ると、それ用の音が返ってきます。2,000ヘルツの音を耳に送っても、2,000ヘルツに対して反応した別の音が返ってきます。つまり耳はそれぞれの周波数に対して、個別に音を返しているのです。

「耳が出す音を測定」する。つまり、有毛細胞の働きを測定する

その特性を利用した聴力検査があります。「耳音響放射(OAE)検査」と言います。耳が返す音に異常はないか、音量は適切かを測定するのです。この検査により、音に対する「主観的な感じ方」ではなく「客観的な測定」をすることが可能になります。また、周波数ごとにある有毛細胞の健康度も分かるというわけです*2

動画で耳音響放射と検査のしくみが理解できます。赤ちゃんがカワイイ。


Neuro-Audio-Screen: Hearing Screening Techniques

おわりに

今日は「耳」の世界をちょっとのぞいてみました。

ところで、当ブログで「耳」について考えたのはなぜでしょうか。それは「耳音響放射(OAE)検査」で見つかった発達障害に関する研究を見つけたからです。そのことについては、次の記事で取り上げたいと思います。 

*1:gifアニメの出典はすべて:Auditory Transduction (2002) - YouTube

*2:あの佐村河内氏に感音難聴があったとは認められないというBPOの判断も耳音響放射検査に基いていました