発達障害のメソッド

ADHD、アスペルガーと向き合って42年。身につけたメソッドを公開します。(「アスペルガーのメソッド」を改名しました)

この世からアスペルガー症候群患者が消えるまであと数年 -歴史から読み解く自閉スペクトラム症

Erase

アスペルガー症候群が、2018年に世界基準から消える

最近、アスペルガー症候群という言葉を聞くことが少なくなりました。一方で、自閉スペクトラム症という名称を目にすることが多くなりました。 

それは2018年にIDC-11*1(WHO)がいよいよ自閉症とアスペルガー症候群を「自閉スペクトラム症」として統一する予定だからです。

アスペルガー症候群の人も、カナータイプの自閉症の人も、グレーゾーンの人も、ひとまとめに「自閉スペクトラム症」と呼びましょう。そんな風に決めたのです。

これを糖尿病で例えるなら、糖尿病という病気が発見され、1型、2型と解明され、さらに特殊な糖尿病が次々と発見され、それぞれに個別の治療法が見つかっていく中で、やっぱり個別に診断するのは難しいので糖尿スペクトラム症と一括りにまとめましょう。深刻度に応じて治療しましょう。そんな感じです。

その昔、ハンス・アスペルガー氏は自閉症の子どもを研究する中で、自閉症とは異なる特性を持つ子どもたちを発見し、これまで考えられてきた自閉症の将来像とは異なる人生設計が可能なことを知らしめました。ですから、最近の自閉スペクトラム症という疾患名により自閉症を一括りにまとめる流れは、アスペルガー氏の考え方に逆行しているように思えます。

では、そもそも自閉症やアスペルガー症候群、そして自閉スペクトラム症はどのようにして登場したのでしょうか。今回の記事では、自閉症から自閉スペクトラム症までの歴史を振り返りながら、アスペルガー症候群が出現しては、消えていく過程に注目してみたいと思います。

年表

簡単な年表にして、まとめてみました。

自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群の歴史から読み解く

自閉症という疾患はいつ登場し、いつ自閉スペクトラム症の考えが誕生したのでしょうか。それは19世紀末にまでさかのぼります。

 

統合失調症時代 −オイゲン・ブロイラー

19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したスイスの精神医学者オイゲン・ブロイラーが発表した「精神分裂病(統合失調症)」の中のいち症状として「自閉症(autismus)」がはじめて登場しました*2 

カナー型自閉症(児童) −レオ・カナー

1943年になるとアメリカの児童精神科医レオ・カナーが「早期幼児自閉症」という論文を発表します。

 彼は幼児期に発症する統合失調症に関心を持ち、子どもの「自閉」症状に着目します(現在では幼児期の統合失調症はレアケースと考えられており、彼が診ていたのは自閉症の幼児と思われます)。

 論文では11人の子どもたちについて述べており、

・「他人との感情的(情緒的)接触の重篤な欠如」(コミュニケーションの障害)、

・「自分でこうと決めた事柄を同時に保とうとする激しい欲求」(常同運動)、

・「反復的なこだわり」、

・「言葉の異常」(言語発達の遅れなど)、

・「物の操作に取りつかれたような器用な動作」、

・「他領域での学習困難と対照的な高レベルの視空間スキルや機械的記憶(認知面でのアンバランス)」

で、これらの行動異常を当初は分裂病と考えていたようで、幼児期にも起こりうる分裂病として捉えていたようです。また、「生来性あるいは生後30ヶ月以内に出現」し、「小児期におけるその他の病態とは独立したもの」として捉えていました。
出典:軽度発達障害フォーラム PDD - 経緯

また、子どもの自閉症の原因は「家族、特に母親の育て方に原因がある」とし、この考え方は当時の主流となりました。しかし、1968年になると「先天性」であるとし、前説をひるがえしました。人間不信になりそうです。

 逆説的ですが、カナーの研究により自閉症が一般によく知られるようになり、自閉症そのものの研究や理解を深めようとする動きが活発化します。アメリカ自閉症協会が発足したのもこの頃です。

 参考:解りやすい解説のあるページ
社会は逸脱者を必要とする(20) カナーと自閉症 グレーゾーン学とアブノーマライゼーション論
自閉症の歴史 - 発達障害って治る?
 

アスペルガー型自閉症(児童) −ハンス・アスペルガー 

レオ・カナーの論文発表のわずか1年後である1944年に、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーは「小児期の自閉的精神病質」という論文を発表します。この論文で彼は4人の少年についての行動パターンに共通性があることを指摘します。

彼らの行動特徴は、

「他人への愚直で不適切な近づき方」、
「特定の事物への激しく限定した興味の持ち方」、
「文法や語彙は正しくても独り言を言うときのような一本調子の話し方」、
「相互のやりとりにならない会話」、
「運動協応の拙劣さ」、
「能力的には境界線か平均的かもしくは優秀な水準であるのに1、2の教科に限る学習困難」、
「常識が著しく欠けている」

といったものでした。また、「3歳を過ぎるまであるいは就学まで両親は子どもの異常に気がつかなかった」としています。

出典:軽度発達障害フォーラム PDD - 経緯

 

ハンス・アスペルガーは、子どもの追跡調査も行います。 

彼は多くのアスペルガー症候群の子供達が、大人になった時にその特殊な才能を生かすと確信していた。彼はフリッツ・V(Fritz V.)という子供が成人するまで追跡調査をした(症例サンプルのフルネームを出す事は人権上の問題から禁じられている)。フリッツは天文学の教授になり、もともと子供の頃から気付いていたというニュートンの業績の間違いを解決した。出典:ハンス・アスペルガー - Wikipedia

カナー型とアスペルガー型の相違点。

アスペルガーの論文はドイツ語であったため、当時世界に知られることはありませんでした。しかし、偶然とはいえ、カナーとアスペルガーは、ほぼ同時期に異なるタイプの自閉症児を発表したことは、自閉症時代の幕開けとも言えるでしょう。

カナー型の自閉症は「言語の遅れ」、「生後30ヶ月以内に出現」、「コミュニケーションの重篤な欠如」などが見られるのに対し、アスペルガー型の自閉症は「文法や語彙は正しいが一本調子」、「3歳を過ぎるまで親は子の異常に気がつかない」「コミュニケーションの不適切さ」などが相違点です。

自閉症 先天性時代 −マイケル・ラター

1972年にイギリスの精神科医マイケル・ラターは「母性剥奪再評価」を出版します。自閉症の原因は家族に原因があるとするには臨床的な証拠が足りず、先天的な脳障害であるという仮説を立てます。 

そして、これがきっかけで、自閉症が先天的な脳障害であることを裏付ける研究が加速します。さらに、自閉症が統合失調症とは別の疾患であるという研究も進みます。

なお、日本では2008年まで、学校教育法で自閉症が情緒障害として扱われており、環境要因的な疾病として捉えられていました。

アスペルガー症候群と自閉症スペクトラムの提唱 −ローナ・ウィング 

イギリスの精神科医ローナ・ウィングはアスペルガー症候群の名付け親です。彼女は、1981年に書いた論文の中で、アスペルガーの論文を再評価します。実に1981年までは自閉症といえばカナー型を指していました。

しかし、ウィングは自閉症と診断されていないものの、社会性、コミュニケーション、想像力に障害を持つ子どもたちの存在に気づきます。それがアスペルガーが研究対象としていた自閉症の子どもたちと特徴が近かったため、それらを「アスペルガー症候群」と呼ぶことを提唱しました。

90年代になるとアスペルガー型でもカナー型でもない、その中間にあるような特性を示す患者がいたため、自閉症を「スペクトラム(連続体)」として捉えるべきとし、「自閉症スペクトラム」と名付けました。

カナーは自閉症を子どもが発症するまれな精神病だと考えていたようですが、ウイングらの研究により、自閉症は生涯続く発達障害である、ということが明らかにされました。

出典:自閉症について改めるべき4つの誤解 - GIGAZINE

  • アスペルガー症候群のジレンマ

    ある意味で、ローナ・ウィングからはじまったアスペルガー症候群。アスペルガーの論文を紹介したウイングの意図は、自閉症者のなかには高い知的能力を持った者もいるという事実を強調することによって、自閉症についてのステレオタイプな見方を変えることにあったとされています。(出典:アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー)

    しかし、今まさに彼女が提唱した自閉症スペクトラムの概念が、アスペルガー症候群をスペクトラムに内包させた疾患名になることで、同じく彼女が提唱したアスペルガー症候群の名前が姿を消そうとしているのです。なんとも皮肉な話です。 

アスペルガー症候群時代 −ICD-10、DSM-Ⅳ

1990年にWHOによって「ICD-10」という国際疾病分類が発表されます。また、1994年にはアメリカ精神医学会によって「DSM-Ⅳ」という精神障害の診断と統計マニュアルが発表されます。 

画期的なのはアスペルガー症候群が自閉症と切り離されて単独の疾患として扱われていることです。

これにより、アスペルガー症候群の研究が一気に加速します(余談ですが、わたしがアスペルガー症候群の名前をはじめて耳にしたのは2002年頃です(ADHDは1990年頃)。大人になってからアスペルガー症候群だと診断される人が多いことは、アスペルガー症候群そのものの歴史が浅いことを考えると、当然のことと言えます)。

参考:解りやすい解説のあるページ
[ローナ・ウイングの“アスペルガー障害・自閉症スペクトラム”とDSM-�Wによるアスペルガー障害の診断基準]: Keyword Project+Psychology:心理学事典のブログ

 

自閉スペクトラム症 −ICD-11、DSM-5

米国のDSM-5ではアスペルガー症候群は廃止、自閉スペクトラム症へ。

しかし、2015年に発表されたDSM-5では、アスペルガー症候群という名称がなくなりました。DSM-5では、カナー型、アスペルガー型、その他のタイプも自閉スペクトラム症という一つの名称に統合しています。 

また、アスペルガー症候群の症状としてウィングの提唱した自閉スペクトラム症特有の「三つ組みの障害」を、「二組の障害」に変更しました。

これは、「社会性の障害」と「コミュニケーションの障害」をひとまとめにして「社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害」とし、「想像力の障害」を「限定された反復する様式の行動、興味、活動」へ変更したものです。

ずいぶんな話です。アスペルガー症候群が自閉スペクトラム症にまとめられたばかりでなく、それを判断する症状もまるで変わってしまったのです。

わたしにしてみれば、ある日突然生まれつきの病気だと宣告され、10年したら、やっぱり病気ではありませんでしたと言われているようなものです。

というのも「限定された反復する様式の行動、興味、活動」の見られないアスペルガー症候群の患者は、DSM-5の定義付けからすると、もはや自閉スペクトラム症患者とは言えなくなってくるのです。

DSM-5では、自閉スペクトラム症の特徴として興味深い文言も登場。

社会的要求が(本人の)制限されたキャパシティを超えるまでは表面化しないかもしれない。と付記したこと。<中略>あるいは、のちの人生で獲得した戦略によってマスクされているかもしれない。という表現が追加された<中略>。その他、本人が困らなければ診断されないという立場をとり、サポートの必要度で、レベル1から3をつけるようになっています。

出典:自閉症スペクトラム(DSM-5の診断基準)

しかし、「キャパシティを超えるまでは表面化しないかもしれない」、「のちの人生でマスクされたかもしれない」という表現に驚きを隠せません。DSM-5の考え方が許されるならば、全人類は自閉スペクトラム症だが「のちの人生でマスクされたかもしれない」し、「キャパシティを超えるまでは表面化」していないだけとも言おうと思えば言えてしまうのです。

 

参考:解りやすい解説のあるページ

じゃじゃ丸トンネル迷路: DSM‐5における改善点(自閉症について)

DSM-5における神経発達障害(DSM-Ⅳの分類からの変更点)

 

2018年発表予定の国際診断基準ICD-11からもアスペルガー症候群が消える予定。

IDC-11でも、アスペルガー症候群という名称が廃止されることになっています。様々な自閉症関連の障害名が「自閉スペクトラム症」一本に統合される予定です。

  1. 機能的言語の低下が見られない(no impairment of functional language)(「意味伝達において機能する」とか、「会話が成り立つ」といった意味合いかと思われます)、もしくは軽度であり、知的発達の障害を伴わない。

  2. 機能的言語の低下が見られない、もしくは軽度であり、知的発達の障害を伴う。

  3. 機能的言語の低下を伴い、知的発達の障害は伴わない。

  4. 機能的言語の低下を伴い、かつ、知的発達の障害を伴う。

  5. 機能的言語の欠如を伴い、知的発達の障害を伴わない。

  6. 機能的言語の欠如を伴い、かつ、知的発達の障害を伴う。

  7. その他の指定されたもの。

  8. 特定できないもの。

自閉スペクトラム症は、中分類として8種類に分けられる予定です。「アスペルガー症候群」といった固有名称でカテゴライズされていたときのほうが、すっきりとしていました(ひどい訳ですみません。和訳が出たら修正します)。

なお、自閉スペクトラム症とは何か、以下のように解説されています。

  • 自閉スペクトラム症は、関心や行動の柔軟性のないパターンと反復性、限定された範囲、また、社会的相互作用や社会的コミュニケーションを始めたり維持したりする能力の永続的な障害によって特徴づけられます。

    障害の発症は通常は幼児期で、発育期間中に起こりますが、後に社会的要求のキャパシティの限界を超えた時まで症状が完全に現れない場合があります。

    欠陥は、本人、家族、社会、教育現場、職業、または、他の重要な分野での役割。そして、社会的、教育的、または、他の背景によって異なりますが、通常すべての環境において守られるべき個々の役割の広汎的な面に機能障害を引き起こすため大変深刻です。

ICD-11 Beta Draft - Joint Linearization for Mortality and Morbidity Statistics

厚生労働省(日本)は、今のところアスペルガー症候群を継続採用。

一方で、厚生労働省は今のところ現行版のICD-10を採用しており、アスペルガー症候群を単独の疾患として扱っています。少なくとも年内はアスペルガー症候群は診断名として使われると考えられます(F845 アスペルガー〈Asperger〉症候群)。しかし、ICD-11を採用することで、アスペルガー症候群が診断名から消えるのは時間の問題でしょう。 

おわりに

たいぶ前になりますが、精神分裂病が統合失調症と名前が変わり、多少の混乱がありました。しかし、各種自閉症から自閉スペクトラム症への変更は、単に名称の変更のみならず、疾患の定義付けすら変える、大きな変更です。

そこに至るまでプロセスには、医学はもちろん、政治、教育… いろいろな分野の人たちの意見が織り込まれているのでしょう。

しかし、患者はどうでしょうか。そこに患者の気持ちは織り込まれているのでしょうか。はじめの志は患者ファーストだったかもしれませんが、その過程で、また、結果として患者は混乱していないでしょうか。患者は置き去りにされていないでしょうか。

少なくとも、患者であるわたしにとっては、非常にややこしいことになっており、翻弄され、失望していると言わざるを得ません。10年後にやっぱりまたアスペルガー症候群はありましたって言われても困るわけです。

もちろん、自閉症患者の将来は決して悪い方向へは進んでいないように思います。根拠はうまく示せませんが、少なくともわたしをアスペルガー症候群だと教えてくれた医学には感謝しています。しかし同時に失望もさせられているのです。

 

*1:疾病及び関連保健問題の国際統計分類

*2:軽度発達障害フォーラム PDD - 経緯

発達障害、ADHDの過集中対策。周りが見えない人に贈る4つの対策。

Concentration

[あらすじ] 過集中は、集中力をコントロールできない、暴走列車のようなものなのです。でも、この集中力を自在にコントロールできるようになれば、最高級のスポーツカーのような存在に変わることだってできるのです。4つのステップがあります。

はじめに、過集中とは

一度集中していると、寝食も忘れて没頭してしまう人っていますよね。あまり度がすぎると、声をかけても、電話が鳴っても、全く聞こえていない。

それって、「過集中」かもしれません。

過集中とは「過剰に集中してしまう状況」のこと。

過集中の影響 →「病気、死の原因」

過集中は、「健康に多大な影響」を及ぼします。体の限界に気づかずに集中力が持続してしまう場合、脳は体を休ませるために、最終的に心臓や他の臓器を止める選択するかもしれません(実感として)。

これを俗に過労死と呼びます。

たとえば、世界的なミュージシャンであったプリンスは亡くなる直前、作曲活動に集中するあまり、154時間連続で睡眠をとらなかったと言われています。

せっかくの集中力も、行き過ぎると「死」や「病気」の原因に。これでは本末転倒です。

過集中の影響 → 「臭い」

集中力を発揮している間は、風呂に入らなかったり、着替えなかったり、水分が不足していたりするため、異常に臭くなり、すごい臭いを発していることすら気づきません。

過集中の影響 → 「人間関係や仕事への悪影響」

それだけではありません。過集中は人間関係や仕事に悪影響を与えます。

たとえば、ネットや仕事に過集中してしまい、家族と食事ができなくなってしまう。こうなると、家族の時間泥棒になるだけでなく、家族をイライラさせたり、コミュニケーションを取るための機会を逃したりと、人間関係を悪化させてしまいます。

仕事なら、次にやらなければいけない用事を忘れて、現在の用事に没頭しすぎてしまう。結果としてすべき仕事を完遂できなかったり、無駄な残業になったり、周りに迷惑をかけてしまうことになってしまうのです。

過集中の人には発達障害(ADHD・自閉症スペクトラム[アスペルガー症候群など])が多い。その原因とは。

プリンスは発達障害と診断されていませんが、発達障害の人に「過集中」の問題が多く見られます。

では、どうして、過集中になってしまうのでしょうか。

発達障害の過集中、3つの原因

様々な原因があるとされていますが、主に考えられる「3つの原因」について触れておきたいと思います。

1. シングルフォーカス特性

Forest


一つ目に「シングルフォーカス特性」という大きな原因があります。

発達障害(とりわけアスペルガー症候群)の人の多くは、複数の情報源を同時に処理できません。簡単に言えば、木を見て森も同時に見ることができないのです。

つまり、一つのことに注目すると、他を無視してしまう特性を持っているのです。

この特性が高いと、目の前の作業に過度に集中してしまう結果、今の自分が「疲れているのか」、「元気なのか」、「ストレスを抱えているのか」という判断すらできなくなってしまうという「自己現状の把握ができない」状態になってしまいます。

2. シングルレイヤー思考特性

Another red flag day in Sri Lanka.

2つ目の原因は「シングルレイヤー思考特性」です。

発達障害(とりわけアスペルガー症候群)の人は、同時的・重層的な思考処理が苦手です。物理的な次元、自己の身体に関わる次元、具体的な他者との関係、社会の中でも意味づけ、価値に関わる判断などを重層的(マルチレイヤー)に考えることが困難なのです。

難しく言いましたが、仕事を例に取ってみましょう。

健常者の場合、ある仕事を引き受けた場合、「期限」、「重要度」、「損得」、「他の仕事とのバランス」、「帰宅時刻」、「コスト」など様々な要素を瞬間的に処理して、引き受けた仕事にかけるパワーを決定します。

「後回しにしよう」とか「1時間で終わらせよう」などと判断します。

しかし、シングルレイヤー思考特性が高いと、そういった重層的な判断ができないため、場合によっては「面白そうだ」という単一のレイヤーで仕事に取りかかってしまうのです。

そこに、先ほどの「シングルフォーカス特性」が働きますので、ますます他の仕事(レイヤー)のことすら見えずに、没頭してしまうのです。

3.全身の過度な緊張状態

Concentration


一度、過集中状態に入ってしまうと、身体のあちこちが過緊張状態になります。つまり、筋肉がガチガチになってしまい、その場からどんどん離れ辛くなってしまいます。しかも、ものすごい姿勢で作業に没頭したりします。

一方で、結果として目先の作業は「見事に」完成しても、他の作業をやる「体力が残っていません」。全身を緊張させた代償として、極度の疲労感が残っているため、ばったりと倒れてしまったりするのです。

つまり、過集中は、集中力をコントロールできない、暴走列車のようなものなのです。でも、この集中力を自在にコントロールできるようになれば、最高級のスポーツカーのような存在に変わることだってできるのです。

過集中のスイッチを切る4つのステップ

では、どうしたら、一度入った過集中のスイッチを切ることができるのでしょうか。今日はこれまで私が試してきた様々な方法の中で簡単かつ一番効果があった方法をご紹介したいと思います。全部で4ステップあります。この4つのステップをすべて行なうことが大切です。

ステップ1 決意を固める。

根性論ではありません。「自分の思い通りに過集中を解き放つという決意」を脳裏に焼き付けるためにとても大事なステップです。

その際、以下の4つのことを決意します。

  1. 「決めた時間が終了したら作業を必ず中断する」
  2. 「誰かに作業を止めるように言われたら必ず中断する」
  3. 「中断させられても絶対に文句を言わない」
  4. 「作業が完了しなくても必ず中断すること」

この4つを固く決意することです。

この決意がシングルフォーカス特性の深いところに働きかけます。そうすると、次第にこの決意が「こだわり」に変わります。

この決意は、自ら付箋に書いてPCのディスプレイなどに貼っておくと良いでしょう。

また、次にやるべき事がすでに決まっているなら、今すべき作業内容と共に付箋に書いて貼っておきましょう。

このときのコツは

「現在の作業はメール返信。次の作業は11:00〜、 50分間でプレゼン資料を作らなければならない

といった具合に「命令調」で書くのがポイントです。とりわけアスペルガー症候群やADHDの人は暗示にかかりやすいので、自分で自分を暗示にかけるのです。

ステップ2 カウントダウンタイマーをセットする。

タイムタイマーアラーム付き (L) 30センチタイプ

「タイムタイマー」か「カウントダウンタイマー」をセットしましょう。

目覚ましアラームではなく、カウントダウンが大事です。

視覚的にあとどのくらい時間が残っているかを意識して作業することが時間内にやり遂げるというモチベーションにもなります。

1回に1時間以上作業をしないようにしましょう

もし、3時間作業をする予定であれば、55分を3回に分けるなど工夫しましょう。55分作業をして5分休む。これを3回繰り返すのです。

5分休む際もカウントダウンタイマーを忘れずに。

うっかり休憩を2時間とったりしてしまいます。

なぜ、3時間続けて同じ作業をしてはいけないのでしょうか。

人にもよりますが、1時間以上身体を緊張状態にすると、後から疲れがどっと出て来るからです。

健常者の暮らしに寄り添う人生とは、雑談だったり、食事だったり、移動だったり、買い物だったり、リクリエーションだったりとやることがいっぱいなのです。そのためには、体力を温存しておかなければならないのです。

Time Timer

Time Timer

  • Time Timer LLC
  • 仕事効率化
  • ¥360

ステップ3 リラックスタッピングで身体を緩める。

タッピング入門―シンプルになったTFT&EFT

仕事を中断すべき時間が来ました。どうしたら集中を切れるでしょう。

リラックタッピングをしましょう。

過集中の原因である身体の緊張を緩めるのです。やり方は簡単、身体の各部をパチパチと叩くことです。

わたしの場合は、腕、ふくらはぎ、太もも、首、ほっぺを各4回ずつ、軽くですがパチパチと音が鳴るくらいの強さで叩きます。

パチパチがだめな人は、さすったり、トントンと叩くといいかもしれません。時と場合によっては腕だけでも十分効果があります。

これは、水泳をはじめスポーツ選手が試合の直前に身体をパチパチ叩いて緊張をほぐしているところからヒントを得ました。

緊張した身体をリラックスさせる、手っ取り早い方法の一つがこのリラックスタッピングなのです。

これは偶然にして、TFTやEFTという心理療法として結果を出しているやり方でした。

より効果を出したいなら、以下の本がオススメです。非常に簡単ながら奥が深いタッピング。不安やトラウマ、過緊張に良く効きます。

タッピング入門―シンプルになったTFT&EFT

タッピング入門―シンプルになったTFT&EFT

 

ステップ4 システマのブリージングをする。

 

最後にシステマのブリージングをすれば、過集中状態、つまり過緊張の状態から完全に抜けることができます。

慣れてくれば、ステップ4、これだけでも過集中状態から解放できます。

システマのブリージングとは、ロシアの特殊部隊が行っている呼吸法です。極度の緊張状態の中でも身体を緊張させないようにする呼吸法なので、非常に即効性があります。

呼吸法といっても、やり方はとにかく簡単です。

わたしは、これをやるとすぐあくびが出ます。

何度もあくびをしてしまいます。つまり、身体がどんどんリラックスしていくのです。こうすると、過集中状態から抜け出せます。次の作業に移るか、ブレークタイムを取りましょう。

ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング

ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング

 
『ストレスに負けない最高の呼吸術』〜システマ式シンプルブリージングワーク100〜

『ストレスに負けない最高の呼吸術』〜システマ式シンプルブリージングワーク100〜

 

おわりに

いかがでしたか? 「ADHDやアスペルガーの人に多い、過集中をプッツリ切る4つのステップ」をぜひ試してみてください。

もちろん、ADHDやアスペルガー症候群などの発達障害の方でなくとも過集中に悩んでいるならぜひこのメソッドをオススメしたいと思います。

わたしが、発達障害(自閉症・アスペルガー・ADHD)のブログをはじめた、たった1つの理由

30歳前半で「発達障害」と診断されて

はじめまして。よしまると申します。

現在42歳、結婚18年目で子どもなし。フリーランスのクリエイター。数年前から海外での生活がメインになっています。

わたしは、このブログをはじめるきっかけとなった、ある疾患を持っています。それは、現在、「発達障害」と呼ばれています。

発達障害には色々な疾患が含まれていますが、わたしは、その中でも、自閉症とADHDをミックスして持っています。幼年期には歩行障害や学習障害もあったと思います。

とりわけ大人になってから悩まされたのは、「自閉スペクトラム症」の症状です。

自閉スペクトラム症は、発達障害の一つで、いわゆる「自閉症」のことです(自閉症とは何かについては、様々な意見がありますので、また後日書きたいと思います)。自閉症といっても、色々なタイプがあります。わたしは、いわゆる「アスペルガー症候群」と呼ばれる自閉症のグループに属しています。

診断を受けたのは大人になってから。30代前半のことでした。もっと詳細に言えば「アスペルガー症候群(ADHDの症状を伴う)、適応障害」と診断されました。

IQ差42、ど・アスペルガー症候群

はじめて医師から「アスペルガー症候群」と診断された時は、ガツーンと頭を打たれたようなショックを受けました。医師は続けて「『ど』が付くアスペルガーですね」と言いました。

わたしが当時抱えていたコミュニケーションの問題、生育歴、IQの偏り、どれをとってもアスペルガー症候群の特徴を見事に表すものだったからです。「『ど』アスペルガー」とは、典型的なアスペルガー症候群だったというわけです。

一番驚いたのは、わたしのIQの偏りです。ある分野のIQは72(境界線)ですが、別の分野のIQは114(平均の上)と、凸凹なのです。33歳の男性の場合、この差が8以上あると、「能力に偏りがある」と診断されるようですが、わたしの場合、なんと42の開きがあったのです。なるほど、これが発達凸凹。

もう、これをもって障害の裏付け。いたく納得しました。

f:id:HULOT:20170123114745p:plain

Formal Assessment – the WISC (intelligence test) | Special Ed: on the bell curveの図を改変)

視力で言えば、左目が0.01、右目が1.0。いわゆる「ガチャ目」のようです。これを裸眼で生きて来たようなものなのです。我ながら、よく矯正もなしに、30年も「ガチャ知能」で生きてこれたと関心したものです。

http://lh6.ggpht.com/__zoKJ77EvEc/TaqqnGeTdSI/AAAAAAAAM8A/Y2nS6rs2fhg/philipbarlow%5B3%5D.jpg?imgmax=800

近視の世界を描いたPhilip Barlowの作品(出典:Soft Focus Oil Paintings by Philip Barlow | Amusing Planet

診断されたことで、ようやく見えた課題

アスペルガー症候群は発達障害です。発達障害とは、神経に発達に遅れがある障害です。発達、つまり、発達の初期である幼児期からその症状が見られる障害です。

しかし、発達障害の実像が分かってきたのは近年のこと。したがって、わたしの場合、発達障害と診断されるずーっと前から、つまり赤ちゃんの頃から、自閉症やADHDの症状と戦ってきたのです。

でも、発達障害が知られていない時代のことですから、周りから普通の子と違うと指摘される「自分」をコントロールすることは、あまりにも残酷なことでした。親子して、ただ途方に暮れ、自尊心を失うばかりの毎日でした。

しかし、発達障害と診断されてからは、向き合うものがはっきりとしたのです。つまり、症状がはっきりと言語化されたことで、「自分」と「普通の人」との違いの矯正に正面から取り組むことができるようになったのです。

発達障害に関する情報により、人生が一変した

たとえば、書店にいくと、すでに発達障害者が生き抜く術(自分のためのメソッド)が
たくさん書棚に用意されていました(当時は子供を対象としたものばかりでしたが)。

それこそ、発達障害の診断が下されたその足で、東京駅前の大型ブックセンターに行き、発達障害コーナーの本を棚ごと購入(大型カート3つ分)しました。そして、取り憑かれたように発達障害について調べたのです。

以来、人生は一変しました。

簡単なことではありませんでしたが、発達障害と向き合って10年。現在、アスペルガー症候群とADHDの症状はほぼ寛解しています。正確に言えば、少々の服薬とサプリメント、そして認知行動療法によって、症状を他人に見せることはありません。

他者に「変人」と見られなくなった今、40年近い人生の重荷は、風船のように軽くなりました。

一方で、普通の人になって本当に良かったのだろうかという疑問も生じました。不器用な人生です。

 

寛解している今、わたしにできることは何だろう

そんなとき、わたしにできることは何だろう。そう考えるようになりました。

その一つが、このブログです。

東京の大きな書店に行けばたくさんの情報を得ることができます。でも、ちょっと離れると書店の発達障害のコーナーは小さなものです。

インターネットを見ても、発達障害に関する情報は、どれも似たり寄ったり。特に、大人の発達障害に関する情報はほとんどありません。

また、その症状について述べるものはあっても、具体的な対処法に関する体験談や、発達障害に関する最新の動向がまとめられたサイトに出会うことは、ほとんどありません。

そこで、わたしが実際にやってみて役に立った、つまり症状の改善がみられたメソッド(解決方法)を紹介してみることにしました。また、発達障害に関するホットなニュースなども取り上げてみたいと思っています。

人生をすこやかにするためのきっかけになりたい

発達障害の症状に悩むすべての方にとって、このブログが、人生をすこやかにするためのちょっとしたきっかけ(もしくは、ヒント)になるなら、うれしく思います。

もちろん、発達障害の人を支えたいと考えている、良き理解者のためにも、このブログを書いて行きたいと思っています。

大人のためのと書きましたが、子ども時代を振り返り、試行錯誤で症状を克服した、その当時、役に立った方法も紹介していきたいと思います。

本業やボランティア、その他の活動もありますから、更新はマイペースです。数年かけて、徐々に慣らしていきます。予めご了承ください。

では、ドキドキしますが、ブログをスタートさせたいと思います!

パンパカパーン♪

2016年、思い立ったが吉日
よしまる